アルプス一万尺考




これで不意に励起されたのが、あのアルプス一万尺、という童謡。
童謡、というには抵抗がある、あの、歌。

カメラのキタムラのCMソングの、あのメロディ。
源はアメリカのトラディショナルソングのようだが、引っ掛かる物件ではあった。


記憶の歌詞は、これ。


アルプス一万尺 子ヤギの上で アルペン踊りをはじめましょ
ララララ ララララ ララララ ラララ 〜 
というやつ。




アルプスの放牧場にいる子ヤギに跨って、無理やり踊るぞ、ラ〜ラ ラララ〜。
どこか動物虐待を匂わせながら、でもどこまでも明るく歌う、そんな歌。

ロデオ状態で、嫌がる子ヤギにしがみ付いて、踊ったる。
そんな不条理ソングの記憶だった、ついさっきまで。

アルプスの少女ハイジが、入ってきてたかな、いま思えば。




で、この写真の尖った右肩にある、ちょっとしたとんがり。
左が目立つけど、実は右のとんがりが、小槍、と呼ばれるピークなのだそうだ。


子ヤギじゃなく、小槍の上で、どうやら踊ろうという歌詞だったらしい。
ついさっき、知った。


一万尺という漠然とした表現を考察すると。
過去の尺貫法からすると、一尺は、いまの、0.303mとなる。

ということはそれに一万をかけると、3,030m、となる。
この写真の小槍ピークの標高が、なんと3,030mなのでした。

このとんがった小槍の上で踊るという不条理を下敷きに、この歌は、始まる。



なにしろ歌詞は29番まであって、結局印象は、戯れ歌なんだ。
例えば。

9番: 蝶々でさえも二匹でいるのに なぜに僕だけ 一人ぼち
10番: とんとん拍子に話が進み キスする時に 目が覚めた

とか、明らかに思春期以降の、内容。
童謡じゃ、無い。




キジを撃つ、とか、花を摘む、が登山における隠語であることを踏まえつつ。
登山という行為が、肉体を感じる行為に他ならないことに、気付く。

マラソンとかもおそらく、そう。


考える、楽しみ。
優れて自然と交わる行為は、脳を使わざるを得ない。

普段使わない場所の、脳を。
だから、いいんじゃないか。


25番: 槍と穂高を番兵に置いて お花畑で 花を摘む

女性が野で用をたすことを、花を摘む、というらしい。
とても美しい、隠語だと思う。

キジを撃つも同じ、奥が深いと思う。


ニクいね。


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